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聖剣伝説4 第1章 【3】
息せき切って大樹の洞の前まで来て、そして、何をするべきなのか見失ってしまった。
先日、「大樹の巫女」に初めて会った日のことを思い出す。
人違いを誤魔化すように、あわてて「初めまして」と挨拶する自分に、彼女は微笑って言った。
会うのは初めてではない、と。
まだ、彼女が大樹の巫女でもなんでもない、ただの「アニス」だった頃、自分は彼女に会ったことがあるという。
「花をくれたの」
そう言って、彼女は、アニスは嬉しそうに笑った。
思い起こせばまだ幼かった頃、友人とともに出かけた草原にとりどりの花が咲き乱れていて、それがあまりに綺麗だったから、手当たり次第摘んで帰って、村の子どもたちに配ったことがある。
花を摘むのはその美しさを少し分けてもらう程度にすべきであって、そう無闇に摘むものではないと、あとで大人に叱られたものだ。
そんな訳だから、別にアニスだけに特別なことをしたということでもなし、そんな嬉しそうな顔をされても困ると、返事に窮していたグランスだったが、小さな昔話を訥々と語る彼女を見ていると、何だか、返事をするのも忘れて、ただその言葉を聞いている内に時が過ぎていった。
小さな思い出を、ほんの些細な思い出を、抱きしめるようにして語るその笑顔が、脳裏から離れない。
グランスはくるりと向きを変え、来た道とも違う方向へと向かって走り出した。
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