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モノころがし

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聖剣伝説4 第2章 【2】

「隊長!?
 どこ行くんですか?」
森へと続く平原の道、とおく村の城壁を望める丘のあたりで、突然声をかけられた。
見ればそこには岩陰にこそっと丸まっている大きな影ふたつ。
「…なにやってんのお前ら」
グランスが言いたかったことを、友人が先に聞いてくれた。
「は! 我々このロザ平原の見回り任務中でありますが」
「途中でうっかりロケットパパイヤを殴り倒してしまい」
「パパイヤに追われて逃げて逃げて今ここでやり過ごしてるところであります!」
「あっそうゴクロウサマ」
落ちた実が誘導ミサイルのごとく襲ってくることで有名なロケットパパイヤをうっかり殴り倒すようなアホな守人はそういない。
棒読みの友人に、びしっと敬礼する左右線対称な2人は、同じく樹の村で守人の任についている双子である。
一方は槍、もう一方は斧と、エモノは違うものの、ごつい図体、むさ苦しい顔、どれをとってもそっくりだ。
正直、いまだにどっちがどっちか時々分からなくなる隊長グランスである。
友人などは、「若干眉毛太めなのが兄貴でー。ヒゲが濃いのが弟」とか何とか言っているが、男の眉だのヒゲだのの濃さ薄さをいちいち観察したい気持ちにもなれない。
「それよりも隊長、どこへ行くんですか? そんな急いで」
聞かれて、仕方ない、とグランスはため息をついた。
「実は森の方角で……」
侵入者の気配がする、と言った瞬間、双子はそろって顔色を変えた。
「侵入者!?
 それじゃ早く隊を集めないと…」
慌てて駆けて行こうとする2人の腕をがっつり掴む。
「いえ、いいです。さくっと内々に終わらせますから」
「しかし……」
双子が困惑した顔をするのは分かる。
守人は隊長中心に行動するが、その指揮権は村長にある。
いかな隊長であるグランスとはいえ、チョロチョロ単独行動することは厳に慎まなければならないわけで、だからその辺はグランスとて考えてはいる。
「森を歩いていたら、偶然不審な者を見つけた…ということにしますから。
 あなた方は、行って村に知らせてください」
そう双子に告げた。
存分に暴れる機会を失するつもりはないグランスである。
「えええ、ちょっと待てよ、それだと時間外勤務手当出ないじゃないか!」
「死傷すれば見舞代は出ますよ」
友人の抗議はさらっといなして、グランスは踵を返す。
慰めにもならねー、とぶつぶつ言いつつついてくる友人を後ろに連れて、グランスは目的目指して再び走り出した。
残された双子は、鏡のような顔を互いに見合わせ、そして村へと駆けていった。

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