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モノころがし

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聖剣伝説4 第2章 【3】

「……あ!」
気付いた時には遅かった。
肘にぶつかった陶器の花瓶は、ひどく緩慢に見える動きでアニスのもつ盆から離れ、そして地面へと吸い付けられていった。
岩盤の床に、鈍い音が響く。
お気に入りだったのに……。
残念な気持ちでためいき一つ、アニスはしゃがみこんで、割れた花瓶の欠片を拾った。
胸が少しざわざわする。
嫌な予感がしていた。


「何だありゃ」
こちらが聞きたい。
二人、茂みに隠れて待機しつつ、覗き見たその風景は、およそこの森には似つかわしくない風景だった。
鋼の鎧に身を包んだ人型の長身、その数3つ。
常春のイルージャでその格好は、余計なお世話だろうがものすごく暑いと思う。
鎧こそ暑そうだが、かといって全身武装というわけではない。
武器もおそらくは最小限なのだろう、どこか落ち着かなげな雰囲気をその3人は漂わせていた。
「斥候…の、ようですね」
要するにスパイ。今までの経験から、グランスはそう断じた。
そもそも、積極的にイルージャに害をなそうと元気に攻め込んできたりしようものなら、日々この島の上空を旋回している守護聖獣フラミーの餌食になること請け合いである。
斥候、らしきその3人は、いずれも額に汗しながら、互いのもつ大判の紙を指しては何か話ながら書き込んでいる。
測地でもして、その結果を地図に落としているらしかった。
最低限のデータだけ集めて、帰ってからやれば良さそうな作業だがこの場でやりたくなる気持ちもわかる。
この森はふしぎの森。
そのファンシーな呼び名にふさわしい、迷いの森である。
測っても測っても計算が合わない、斥候泣かせな森であった。
「まあ、どれだけの情報をとられたかは分かりませんが…
 モノだけ置いて、お帰り願いましょうか」
「そだな。って何で正面から行くの!?」
奇襲する気だったらしい友人の抗議の言葉はさらっと流し、グランスはあっさりと茂みから出て、
「はい、そこまで」
鎧の3人に笑いかけた。
右手には細剣、そして左手には精霊の力が渦を巻く心地よい流れを感じている。
にこやかな挨拶とは裏腹に、しっかり臨戦態勢だった。

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