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モノころがし

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聖剣伝説4 第3章 【2】

「最近の島が少し変?
 本当にそう思うのか?」
半眼で睨まれ、グランスは言い淀んだ。
何の剥製かも分からない骨、骨、骨が積まれた薄暗い部屋の中で、その重々しい口調には妙に威迫感がある。
「はい…。
 このところ、精霊の力がどこか薄弱なように感じます。
 村長なら何かお察しのところがあるのではないかと思いましでッ!?」
言葉の途中で投げつけられたのは紙の束。
見れば、細かいイルージャ文字がぎっしり刻み込まれている。
「これは…」
「この半年の精霊のうごきをまとめたもんだ。
 少し変なんてもんじゃない、例年にない妙な状態だよこれは」
紙の束に目を走らせたが、そこに並ぶ文字の意味がよくわからない。
村長の任について十数年、年齢はもう80に手が届こうかという彼女は古語も堪能だ。
論理的で使い勝手がいいからと言って村の出納簿から庭の朝顔の観察記録まで古語で書く。
しかし周りの者でその古語をちゃんと読めるものなどそういない。
ちょっと読めないんですけど…と言えば、大事な言語だからお前が覚えろとお叱りを受ける。
そんな彼女の弟子として育ったグランスや、実の孫に当たる彼の友人などは、おかげで随分古語には詳しくなったものだが、それでも今渡された記録は難解を極めた。
戸惑った表情が顔に出たものか、村長はやれやれとため息をつき、
「とにかく、ここは一つ巫女様にお伺い立てといたほうがいいだろうね」
そう言って、グランスの手から紙の束を取り上げた。
「巫女様が何も仰らないってことは、そう喫緊の事態とみるべきものでもないんだろうが…
 ? どうした、グランス?」
聞かれて、グランスは言葉に詰まる。
アニスに、余計な心配を掛けたくないと一瞬思ってしまった自分が不思議だった。
アニスは巫女、何か村に問題が起こればまず彼女を中心として事態に当たる。
だから、余計な心配を掛けないも何もないのだが…
「いえ…。分かりました。では早急に」
「ああ、頼んだよ」
グランスは一礼して、村長宅をあとにした。

残された村長はひとり窓越しに、歩み去る弟子の後ろ姿を遠くみつめていた。
あの弟子が、何でもそつなくこなすようでいて実に不器用な面をもっていること、屈折しているようでいてどこまでも一途なところのあることはよく知っている。
そして。
「何か妙なことになってなきゃいいんだけどね…」
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