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モノころがし

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聖剣伝説4 氷狼の子【1】

「ストラウド!」
そう呼ぶと振り返る。
顔いっぱいに不機嫌な表情を浮かべて。
寄るな触るな話しかけるな、そんな意思表示はしっかり無視して、彼女はにこやかに話しかけた。
「中庭の花が咲いたのよ。
 前に一緒に植えたでしょう、アレ」
「…俺は植えてない。
 アンタが一人で土をいじってただけだろう」
憮然と反論する少年に、二割り増しの笑顔で、
「私が穴ほってる間、苗もっててくれたでしょう」
そう返した。
ああ言えばこう言う、とでも言いたげな不満げな顔をした少年だったが、ややあって、ぼそりと呟く。
「…これから剣の稽古だ。ヒマがない」
ストラウド5歳、この氷の国ロリマーの第一王位継承権者。
父親から受け継いだ武芸の才はこの年にして抜きんでており、今日も朝から剣の稽古…
だということは勿論知っている。
手は打ってあった。
「その稽古だけど、今日は私が師範代することになったからヨロシク。
 陛下の許可もしっかり受けてありますから安心してね」
「………え?」
そう言って絶句したストラウド、そのこの世の終わりみたいな表情を、面白いなあと思ってしげしげ眺めた。
「たまには違う剣筋に当たってみるのもいい経験よ」
これでも昔はその人ありと言われた剣士だったんだからと胸を張る。
あとは、ストラウドの手をとって、ほとんど引きずるようにして連れて行った。
空が抜けるようだ。
ロリマーの、短い夏が近づいていた。

ロリマー王家の第2夫人として彼女が輿入れしたのはもう1年前のことだ。
ストラウドの母に当たる第1夫人が亡くなってすでに4年が経っていた。
それほどに王妃不在の期間が長きにわたったのは、外戚争いのいざこざが大きかったという。
各派閥がつぶし合う中、武勲を重ねて名をなしていた彼女が、武を尊ぶロリマー王の意志を受ける形で第2夫人におさまった。
どこの馬の骨とも知れないだの単なる力自慢だの言われるのは慣れっこである。
そんなことは問題にもならない。
それよりも目下の問題はここにあった。
1年前に出会ってから、まるで心を開こうとしない義理の息子である。

「見てみて、これよこれ。白い花。
 今は白いけど、もう少し経つとピンクになってね…」
「稽古は」
誤魔化されないぞとばかりに聞いてくる。
ちょっと漏れそうになるため息はぐっとこらえた。
「ストラウド、そんなに剣が好き?」
さらっと聞いてみると、ふいと顔を背ける。
「好きとか嫌いとかじゃない」
こういう仕草をする時、張り詰めた中に小さな幼さがほの見えたりする。
それが何だか痛々しかった。
「そう…」
膝の土を払って、立ち上がった。
「それじゃ、今日はこの花を摘んで帰ってお部屋に飾りましょうか」
「人の話を聞け」
まだまだ道のりは長そうだった。
それでも、時間はある。
長期戦は得意なのだ。
時が少しずつ、全てを溶かしてくれるはずだった。
きっと、必ず。

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