忍者ブログ
モノころがし

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

聖剣伝説4 葬送曲

聖剣4を全編小説化するならこんな感じで始める。かも。やりませんけど!
下書きです。


空を覆っている雲を磨りガラス越しに見上げると、ただ世界を包んでいるだけのように見えるそれが、実は地上の何者も追いつけないような速さで流れていっているのが分かる。
今にも泣き出しそうな空を戴いて、村は静かに沈んでいた。
夜の「式」の準備に駆り出されて、大人はみんな出払っている。
エルディは、自分と、そして同い年の幼なじみが残されたきりの広い家の静けさに押しつぶされそうになる気分を振り払うように一気に窓から飛び下りた。
エルディたちも準備の手伝いを全くしなかったわけではないのだが、子どもに任される仕事は割と早くに終わってしまって、今はもう邪魔ということなのか、家に帰って静かにしていなさいと言われてしまった。
エルディひとりでは静かにしているはずがないとよく分かっている大人たちは、すぐ近所に住んでいるレキウスにも、エルディと一緒に村長の家で待っているように言いつけた。
ふたり、何か話すわけでもなく、黙ってリビングに座っていた午前中、そのうちレキウスは、「昼ご飯の支度」とだけ言い残してキッチンの方へ行ってしまった。
キッチンには、朝、エルディの育ての親に当たる村長が作り置いてくれたスープがあって、あたためるだけで済むはずだったから、エルディはレキウスの後を追うでもなく、こうやって空を眺めてぼうっとしていた訳だ。
空の黒さは時とともに濃さを増していく。
嵐がくる。


リチアのご両親が亡くなった。
村長がエルディにそう教えてくれたのは昨日のことだ。
食事もそこそこに飛んでいった。
リチアは泣いていなかった。
呆然としているわけでもなく、ただ自分に与えられている役割を、大樹の巫女として取り仕切らなければならない自分の両親の葬儀の準備を始めていた。
リチア、と声をかけると、大丈夫よと笑う。
何が大丈夫なもんか、リチアの笑顔の下に押し殺されている悲しみを感じ取って、エルディはそう言いたかったけれど、ぎりぎりのところでこらえているリチアを見ているとそうも出来なくて、ただ彼女の肩をそっと抱いていた。
今はどうしているだろうか。
泣いているだろうか。
エルディは知っていた。リチアが、きっと今も悲しみを押し殺したまま、自分の役目を果たしているだろうことを。
いつものように思い切りよく行動できないでいる自分ももどかしかった。
泣いているなら、いいのに。
空を見上げた。雨はまだ、降らない。
PR
Material by 箱庭マナ工房 / ATP's 素材置き場  Powered by [PR]
忍者ブログ