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モノころがし

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聖剣伝説4 氷狼の子【3】

「はい。一本。」
頭の上で寸止めした木刀をかざして笑うと、その下に渋面が覗く。
「……お前の太刀筋は変だ。おかしい」
木刀を払うと、負け惜しみというわけでもないのだろうが、文句を言ってくる。
そんな義理の息子に苦笑して、彼女は木刀を収めた。
「ストラウドは何でも力に頼りすぎ。受け流すことが必要な時だってあるでしょ。10の力だけじゃ20の力には勝てないけど、技を足すことで…」
「必要ない。その時は100の力を持てばいい、それだけのことだ」
「………」
この年齢で帝王学を修め、国内の概況も熟知している、父王自慢のよくできた息子であるストラウドが、実はものすごいバカなんじゃないかと思うのはこういう時だ。
そして彼女はバカな子ほど可愛かった。
「……力だけじゃ、本当に欲しいものは手に入らないよ」
陳腐ではあるが、力で戦場を渡ってきた彼女の、それは実感だった。
しかし。
「あんたは何も分かっていない」
彼女が出会ったのは、ストラウドのまっすぐな、鋭い瞳だった。
「力以外に何があるんだ。この世界の中で確かなものが。
 永遠のものがどこにあるんだ。力でつなぎ止めなくては、変わらないものなんてどこにも…」
そこまで言って、自分の失言に気付いたというように押し黙る。
彼女はしゃがむと、ストラウドに目線を合わせた。
「どんな力だって、永遠じゃない。ストラウドだって、本当は分かってるでしょ?」
「………」
ストラウドの拳がぎゅっと握りしめられる。
「……それなら。
 それなら、一体どうしろというんだ…?」
絞り出されたのは、絶望の言葉。
彼女は、ストラウドがまだ小さい頃に、母親を亡くしているということをふと思い出していた。
ストラウドの手をそっと取った。
「永遠のものはあるよ」
そしてその手を、自分の胸にあてがい、笑う。
「永遠のものはここにある。ストラウドが信じるなら、きっと」
ストラウドは何も言わなかった。
ただ、彼女の目を見つめていた。
ずっと。ずっと。
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