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聖剣伝説4 氷狼の子【4】
「ストラウド」
名前を呼ばれて振り向いた。
自分をそう呼ぶのは、もともとはこの人ひとりだけだった。
よけいなのが、最近ひとり増えたけれど。
「はい。父上」
小さく会釈して、父王の足下に膝を折ると、いい、というように手を振り、このロリマーの王はストラウドをまっすぐに見据えた。
「最近……どうしている。
学問は? 剣の稽古はすすんでいるか」
聞かれたのはほんの当たり障りのないことばかり、それでも生まれたときから王宮育ちのストラウドには、言葉の裏を読もうとするクセがついている。
父王の意図がどこにあるのか、わかりもせずに不用意な受け答えは禁物だった。
「…はい」
結局、小さな応答で済ませ、父王の次の言葉を待つことにした。
少し、違和感があった。
父王が何か、ためらっているように感じた。
勇猛果敢、先の皇統の危機を自ら救い、この国に絶対的な秩序を打ち立てた王が、ためらい?
小さな不安を押し隠してみつめるストラウドの視線の先、王はややあって、おもむろに言葉を継いだ。
「剣の稽古を……義母につけてもらっていると聞いたが」
これか、と思った。
覚悟はしていた。言葉も用意していた。問題は、ない。
「はい、義母上は剣術に長けた歴戦の方と伺いました。
義母上が稽古をつけて下さるというので……」
それだけです、と、最後に少し言葉を強めて言う。
父王はその言葉に、どこか拍子抜けしたような表情を一瞬見せた。
不思議だった。
安心してくださると思ったからだ。
自分は、母親のぬくもりに甘えているわけではない。
そう理解してもらえれば。
そうすれば、父王は安心して
きっと、今のままでいることを許して
……自分は今、何を考えた?
何か大きな間違いを犯したように感じて動揺するストラウドは、父王の次の言葉にはっと顔を上げた。
「そうか」
言葉は短かった。
「それなら、いい」
その中に何が含まれているのか、ストラウドには分からなかった。