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モノころがし

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聖剣伝説4 第3章 【5】

 何があったのかと聞いても彼女は答えなかった。
 ただ、何でもない、と首を振るばかりで。
 彼女の周りの空気に、精霊の気配が色濃く残っているような気がしたのは…あるいは、錯覚だろうか。
「あーびっくりした、めちゃめちゃびっくりした」
 まさかいきなり巫女様と遭遇するなんて思わないぞっていうか何であの人あんなとこにいたの?
 友人の言葉を聞くともなしに聞いていたグランスは、今日のアニスの様子を思い出していた。
 もしかして、と思う。
 自分はあんまり頼りにされていないのだろうか。
 ……何故そっちへ思考が流れるのか、自分が不思議だ。
「グランス! おい聞いてるのか?」
 聞いている。耳半分に。
「……なんですか」
 顔を上げると、あきれたような友人の顔に出会う。
「お前さ、さっきからずっと変だぞ
 ていうかな、ここ最近ずーっと何か変だ。
 まさかお前……」
 沈黙およそ30秒。
 蝶々がヒラヒラと近くの白い花にとまった。
「………なんでもない」
 結局、折れたのは友人のほうだった。
 言い淀む友人の顔を見ていて、気付いた。
 そうか。
 これは、そういうことだったのか。
「愛しているのだと思いますよ」
 友人の体がぎしっとこわばる。
 そんなこの世の終わりみたいな顔しなくてもいいと思う。
「おそらく、そう、なのだと思います。
 もしくは、その前兆か」
「思いますってお前……」
 言葉をなくす友人に、笑みを返す。
「大丈夫ですよ。
 これでも気持ちの整理は得意なんです」
 そう、今まで感情に溺れるようなことはほとんど無かったし、今だってこんなに落ち着いている。
 大丈夫だ。
 大丈夫、のはずだった。
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