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【1】勇者の子守りは楽じゃない
「お前たち!そこまでだ!」
やりやがったァァァ!
朗々と響き渡った連れの声に、俺は頭を抱えて座り込んだ。
ここ数日おとなしくしてたんで油断したぜ…!
ちったあ反省したのかと思いきや、何のことはねー、単にここ数日、トラブルに遭遇しなかっただけじゃねえか!
再会して1ヶ月、俺もいい加減身がもたねえよ…!
俺は改めて、コイツを俺に押し付けた賢者のじいさんを恨んだ。
…しかしまあ、状況はマシな方だ。
5日前、アイツが1人で完全武装の帝国兵50人(ジャッカル×5付き)に突っ込んで行った時よりはマシな方だ。
相手は帝国兵じゃなく、どこの街角でも1セットはゴロついてそうなゴロツキ風の野郎ども、その数およそ1ダース。
そいつらの真ん中には貧相なおっさんが鞄を抱えてうずくまっている。
そのまま写生して辞書に載せられそうなくらいのカツアゲの図だ。
問題ない。
「行くぞボガード!」
連れが俺に投げた掛け声を合図に、走った。
俺たち以外に立ってる奴がいなくなるまで、大して時間は掛からなかった。
俺としては、男臭しかしないこの状況は全くノラなかったんだ、正直な話。
自分から厄介事に首突っ込んだんだ、大した相手でもないんだから連れに全部任せて他人のフリしたい。
しかし。5日前の騒動のあと、帝国各地にこんなチラシがばらまかれた。
【凶悪犯手配書
名前 ジェマ
年齢 十代後半
男女7名を殺害し、依然逃亡中。
見掛けたらすぐ知らせて下さい。
あなたの帝国警察】
流石に、帝国兵一小隊がガキ一人に壊滅させられましたとは言えなかったらしい。
そこで俺たちは、身に覚えのないことで立派なお尋ね者になったってわけだ。
「目立つ行動はするなっつったろうが馬鹿野郎!」
俺が怒鳴り付けても、
「人助けできたんだからいいじゃないか」
口とがらせてしれっと言いやがる。
こいつは~ッ
一度とことん言っといてやろうと思って歩を詰めた、その時、
「人助けだと…?何を言ってんだアンタら…!」
絞り出すような声がした。
振り返って見てみれば、先程俺たちに殴り倒されたゴロツキくんがこっちをすごい顔で睨んでいた。